抗生物質 ペニシリンの大量生産に成功
さわやかな秋晴れが続き、まさに錦秋という感じですがこれから寒くなると風邪やインフルエンザが心配ですよね。
今年はすでに季節外れのインフルエンザの流行がありましたので、より一層警戒が必要となりそうです。
ところでヒバという樹木から抽出される精油や蒸留水には「ヒノキチオール」という成分が含まれていて、消臭作用のほか、カビや細菌などを寄せ付けない抗菌作用があることをご存じでしょうか。
ヒノキチオールを発見したのは東北大学の野副哲夫博士。1936年のことです。
このときすでにヒノキチオールには抗菌作用があることはわかっていましたが、その4年後の1940年にはハワード・フローリーとエルンスト・チェインという2人の研究者が抗生物質「ペニシリン」の大量生産を成功させます。
ペニシリンは1928年にアレクサンダー・フレミングによって発見されていましたが、治療に活かせるほど大量に生産することはできていませんでした。それを成し遂げたのがフローリーとチェインだったのです。
ペニシリンの大量生産は「ペニシリンの再発見」といわれ、フレミング、フローリー、チェインの3人は1945年にノーベル医学・生理学賞を受賞しています。
ちなみにこのフレミングは「フレミングの法則」のジョン・フレミングとは違う人物です。
ヒノキチオールが薬剤耐性を持った肺炎球菌に作用する
話が少しそれてしまいましたが、ペニシリンの再発見によってたくさんの命が救われその後もさまざまな抗生物質が開発されていきました。そうしたこともあり、ヒノキチオールは医療の分野から遠ざかっていきました。
しかし近年は抗生物質や化学薬品が効かない細菌やウイルスが現れ、「薬剤耐性菌」として世界的に問題となっています。
薬剤耐性菌は「Antimicrobial Resistance」、略してAMRとも呼ばれますが、WHO(世界保健機関)は2011年の「世界保健デー」のテーマを薬剤耐性菌対策とし、世界的な対策が必要であることを訴えているほどです。
こうしたなかヒノキチオールは天然の抗生物質として再び注目を浴びるようになっています。
その大きなきっかけとなったのが、新潟大学大学院の研究チームによる報告です。
それによるとヒノキチオールが薬剤耐性を獲得した肺炎球菌に治療作用を示したとのこと。
抗生物質の多用によって薬剤耐性を持つ肺炎球菌が年々増えるなか、一筋の光となりそうです。
ヒノキチオールが風邪やインフルエンザに作用することは明らかとなっていませんし、実際に医療現場で用いられるまでには時間がかかるかもしれませんが、
天然の抗生物質がどのように活用されるのか、これからの動きに注目したいところです。
前の記事 「冬場の汗臭にもご用心」はこちら